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ふれでぃとワタシ〜8th Freddie Marcury Tribute Concert〜

 恋、それは盲目。
 初めて彼を見かけたのはTVだったわ。冷えたシャブリを片手に怠惰な時間を過ごしていたその時、聞き覚えのあるピアノのイントロがTVから流れてきたの。そう、これは「ウィーアーザ・チャンピオン」だわ…と目を向けた瞬間、シャブリふきだしちゃったわ。だって私あんな衝撃って初めてだったんだもの。TVの中でその人は頭に赤い王冠、同じく長いマントを引きずって、繊細なタッチでピアノを弾いて歌っていて、まるでその声は今は亡きあの人そのものだったの。でも見た目は全く違うの!そのギャップの激しさときたら…あぁもう考えただけで私…。でもそれ以来私の心をとらえて離さない彼、それがふれでぃ江籐、KWEENのヴォーカルよ。
 ここでKWEENを知らない困ったちゃんに。KWEENとは、1982年以来QUEENのコピーバンドとして(バンド名は変えながら)活動してきたバンドで…えっ?QUEENについて?そーいうアナタは読む必要なし。こっから先もっとわかんなくなるから。1991年11月のフレディ・マーキュリーの死去をきっかけに全国ツアーなど本格的な活動が始まったの。元モットザフープルのモーガンフィッシャーや、はたまた本家のブライアン・メイも絶賛の完成度の高さで、特にヴォーカルのフレディ江籐なんかはもう、本場仕込みの美しい英語で(フレディー・マーキュリーの英語も綺麗だったもんねー)歌唱スタイルから衣装、マイクスタンド(あのステッキ状のやつ)まで完コピ。メディアへの露出もけっこうあって、まさにキング・オブ・トリビュートバンド・オブ・QUEENなの。分かった?
 愛それは続けること。
 だいたい、コピーバンドにしても、ツェッペリンやストーンズとかって結構多いとおもうんだけど、QUEENのコピーやろうっていう人って珍しいと思うのよ。ジミやキースになりたいギターキッズはたくさんいるけど、ブライアンファンのギターキッズって…俺もいつかは家の暖炉の木から削り出しでギターを作りたいぜ!なんて子はいないだろうな。まず暖炉がないもん。これは冗談だけど、そんな状況の中で、妥協することなく完璧なQUEENのライブを追及する彼ら。特にふれでぃ江藤は、まさにKWEENを演るために生まれてきた…と言ったらちょっと過言だけど、日本国内で彼の右に出る者は絶対いないはずよ。そのぐらいすごいの。
 私コーフンしてきちゃったわ。だって彼にまた会えるっていうんだもの。フレディ・マーキュリーの死後、毎年続けてきた追悼ライブも8回目、11月21日に今年もKWEENがやってくるの。今年は年代にこだわらずに初期から後期(1986年ヨーロッパツアー以降のミラクルやイニュエンデューのアルバムを含む)までを広くカバーしたステージを予定しているらしいわ。これらのワードでピンとこれる人も、何言ってるかさっぱり分からんわいというアンポンタンもKWEENを観て受ける衝撃は絶対平等よ!ワタシが保証します!!

前略クリンゴン様

『前略 クリンゴン様。
 初めて貴方にお会いしたのはELLのライブでのこと。どなたかは存じ上げませんが、アフロヘア(?)が印象的で、めっちゃファンキーな人かと思いきや、曲のあまりの旋律の心地良さに、思わず吐息を洩らしたのを覚えています。2回目の出会いは、1stアルバム、クリフ・アンド・ワゴンでした。それはクリンゴンという造語のもたらす意味の通り、ワタシの心にしがみついてその手を今なお弛めません。このアルバムを聴くと、いつも既視感にも似た思いが胸の中に蘇ります。海岸線を車で走り抜けるような、眼前に広がるパノラマを胸いっぱいに吸い込むような、湿った空気に蒸せ返る暑さのような、そんな何かが…。

 優しくて懐かしい…。

 切なくて熱い…。

 曲を作るその中には体験したこともあれば映画で観たことや本で読んだことや色々な思ったことを詰め込んでいって一つのストーリーに仕上げるんだって、言ってましたね。本といえば「アルジャーノンに花束を」のラストシーンに涙したというV・Keyの木村さんの精神世界にもとても興味が沸きました。
 ところで今はマキシシングルとアルバムを製作中だとか。やはりハートをワシ掴みにされた私としてはその辺、大いに気になるところで、そこの意図を察してか、CDについてもこんなふうに言ってましたね。
 「気軽な感じで、ラフに録ったんでライブ感もあると思いますよ。他に、前はピアノだけだったんだけど、今回はオルガンとか色々な楽器も使ってるし、曲も(他のメンバーとの)共作とかもあったりして前回とは少し違うものが出来ると思う。」って。前作は木村さんが殆ど曲を作っていたのが、今回はよりいっそう融合の密度が濃くなってきたということなのかしら。だって「皆それぞれに持つばらばらなものが くっついた、融合みたいなところがクリンゴンだと思う。」って言ってたもの。
「例えば深く掘り下げていくと、バックグラウンドがハードロックだったりするヤツとか、テクノだったりするヤツとかいて、60年代とかのアメリカやイギリスとかのソングライターが好きやったり、皆一致しないけれども合わせれば、形になってる」って。
 挨拶もなしに私の心にスルリと入ってきて空気のような自然さでそこにいすわちゃったクリンゴンの音楽が、ばらばらの個性から出来あがってるなんて私だってちょっとびっくり。この心地よさは、恋人のそれと似ているのでしょうか。私が今書いているものは実はラブレターなのかもしれません。次回ELLでお会いできる日を楽しみに待っています。
 親愛なるクリンゴン様へ』

 ps・ごめんね、ダーリン。他の人にラブレターを書いちゃいました。

LOOP THE LOOPの初めてのロンドン(?)

 5月25日灰色がかった空に昇っていく煙を見つめ「うめ〜」と言葉を交わした。一度は行ってみなあかんなと思ってたロンドンで半日ぶりの煙草。ほんまに来たんやなとしみじみ思った。前日にライブがあったため出発の4時間前まで打ち上げで騒いでいたせいか、頭も体も重い。しかしキャブの窓から見える景色に眠気もいつのまにやら覚め、とうとうロンドンレコーディングが始まった。翌日からさっそく、器材を運び込みリズム録り開始。今回のレコーディングは驚くほど順調に進み、ギターダビング、歌入れも含めほとんどワンテイクに近い回数で行っていった。まぁロンドンまで行って小ぢんまりしてもしゃあないからなぁ。そんなわけでレコーディング自体は煮詰まることはなかったのだが、やっぱり煮詰まるのである。食べ物。
 昼食と夕食はスタジオで用意してくれるのだが、ほとんどのものになぜか混じっているハーブ。いまだに目の前にすると身構えてしまう。それにねぇやっぱり初めて見る食べ物って身構えるもので恐る恐る食べてみるんだけど、やっぱりまずい。森男なんてすぐ横にシェフがいるのに「うぇっ」とか言ってるし。
 食べ物に限らず目にするものほとんどが初めて見るものだからみんな戸惑ってた。真っ昼間から酒飲んで絡んでくるオヤジもいるし、工事現場で働いているほとんどの人はタトゥはいってるし、なんなんじゃここはって。その上、マーケットに行くと平気でぼったくろうとしてくる。油断できへん。恐るべし英国。というか恐れすぎ俺。おかげでスーパーのレジで英国人ギャルに日本語で「すんません。」とか言ってるし。さんざんケンシとチャンシーに笑われた。
 向こうにいる間フラットを借りたんだけど、ここは居心地が良かった。俺、ケンシ、森男、大谷さん(マネージャー)が93 green croft gardensで、チャンシー、ケンちゃん(プロデューサー)が92green croft gardensという2つのフラットで過ごしてた。この2つのフラットは今回のマキシ、アルバム両方に曲のタイトルとしてもそのまま使われてたりする。(93g・c・gでは火災報知機が2回鳴った。調理中に)
 レコーディングでロンドンにやって来たわけだが、撮影も重なり仕事とはいえ、市内を観てまわることができた。重厚であり、繊細でもある街ロンドン。多くの人種がひしめきあい、ライフスタイルが交錯している。一度ライブハウスに足を運んだが、そこにはあまり見れない光景があった。ティーンエイジャーに限らず40代50代の人までもが酒を飲み一緒にライブを楽しんでいる。腕をぶん回して叫んでいるおばちゃんもいる。やはり音楽というものが文化としてだけでなく、いかに生活に密着しているか、さすがロンドンである。
 しかし 日本が恋しいのである。この3週間の間に出ている週間マンガのこと、プロ野球の順位、エアコンつけっぱなしじゃないか、みんな日本での生活が頭をよぎり始めてた。そういや帰ってきた次の日にもライブがあったよな。というわけで無事レコーディングを終え、日本に帰ってきたんだけど、この作品をひっさげてこれからまたライブまわろうかなと。11月17日をお楽しみに。そしてまたロンドンに行きたいのでそのときのために英国に2つの要望。1つ、煙草の低価格化、1つ、日本人をなめるな!(特に俺)

ループ・ザ・ループ 須川基