帰ってきたナンパ日記 by みのう(THE CACTUS)

 ついに始まった。まさに天職ともいうべき僕「みのう」のナンパ日記。僕はこれを書くために生まれてきた人間である。しかし、僕がこのナンパ日記を書くからといって、毎日ナンパばかりしているわけではない。心が砂漠の様に乾ききった時、つい魔がさしてやってしまう程度である。さて前置きはこれぐらいにして本題に入ろう。

 時は二年前、僕は夜の金山駅にいた。何をするわけでもなく、ただぶらぶらと背中に哀愁を漂わせながら、ふらっと本屋へ入った。無論ひまなので立ち読みをするためである。多分この時、僕が世界中で一番ひまな人間だったであろう。するとその時、後ろから甘い、しかし頭の痛くなるにおいがしてきた。サリン?いやちがう。このにおいはシャネル・エゴイストだ!」

 ドキドキしながら後ろを向くとそこには藤原紀香風の女性が立っていた。しかも僕の顔を見て笑っているではないか!何がおかしいんだ?この人は僕にケンカを売っているのか?いくらこの僕でも女性にだけは負けないぞ!やるのかーこのオッパイ星人め!

 いや、ちょっと待てよ、あの笑顔はどうもちがう。あの目はどこかアンニュイでさみしそうな目だ。どうしてそんなことが分かるかって?それは長年ナンパの経験をつんだ僕だから分かるのだ。これ以上ひ・み・つ。

 さっそく僕は声をかけることにした。「あのーどこかで会いましたっけ?」するとその女性が言った。「ええ、会いましたよ。前世で。」どっかのドラマで聞いた様なセリフだが、そんなことは今の僕にとってはどうでもよかった。

 よーし、何としてもこの女性を「モノに」しなければ。ナンパの帝王みのうの名がすたる。それになんといっても今の僕はひまだ。ただのひまな人とはわけがちがう。何せ世界一ひまなのだから。

 「そうですか。ありがとうございます。実は僕もそんな気がしてたんですよ。どうです、ここで知り合ったのも何かの縁です。一緒にフランス料理店のマキシムでエスカルゴでも?」「ええ喜んで。」よし、まずつかみはオーケー。あとはどうやって最後まで落とすかだ。

 「今夜は君を帰さないよ。」

 「私も今日は帰りたくないの。」

こんなに世の中うまくいっていいものなのか?いやいいんだ。多分一年分の運を今ここで使っているのだろう。そして2人は愛の終着駅へ……。

 まさに入ろうとしたその時!「実は私男なの。それでもいいでしょ?」一人逃げる僕の足は、カールルイスより早かった。