ニューヨーク特派員報告
第87回

オメガ・ジャーデン


ざっと今月のスケジュールを見渡してみて、一番良くやった事。それは、最近参加してる、オメガ・ジャーデンというイタリア系ギャル2人組を中心にした、エレクトロヒッピー系のバンドでのライブ。見てみると週1回ペースで演奏してる。プタス(僕の参加するノイズユニット)でのライブもあったから、週2回同じハコでライブもした。ボルチモアへツアーにもいった。最近は、ドラマーも加入して、迫力と勢いもでてきた。やっぱ、生ドラムはダイナミクスが違う。

このバンドの核のエイバちゃん(G&Vo)は、僕と大学で同じ録音エンジニアの専攻である。一緒にプロジェクトとかもやって、曲も作ったりしていた。年齢は、15歳くらい離れてるけど、音楽の趣味はダブる。現代音楽系のクラスもとっていたし、ノイズにも理解がある。プタスのライブにも、よく相方のゾーイ(Key&Vo)と足を運んでくれる。ブルックリンのアパートにスタジオがあって、そこで練習をしている。そこは一階がバーで、2階にゾーイ、3階にエイバで、屋上は彼女達の畑というビルなので、貸し切り状態なのだ。二人とも父親は、本物のヒッピーらしい。

エイバのスタジオは、僕の住むハーレムからは、ちと遠い。地下鉄でマンハッタンを縦断し、川を越えて3駅目、パークスロープという公園から、川にむかった滑らかな坂道エリアにある。長い移動時間のお礼にと、いつも夕食をご馳走してくれる。彼女達は完全菜食主義者なので、有機栽培のブロッコリ/いんげんと、アボカドと玄米が中心。ビールもくれるけど、最近は控えるようにしている。夕食団欒後のセッション。ホームスタジオならではの醍醐味だが、これがなかなか調子がよい。帰りは、一番マンハッタンに近い駅まで車で送ってくれる。

若者達は、シーンをささえているマジョリティであるので、エネルギーがあっていい。だから、趣向のかぶる連中と一緒にギグるのは、とても楽しいしハッスる。この間の、企画ものに参加したときは、アンドリューW.K.がシークレットゲストで、我々の前に演奏した。アンドリューは随分昔に、対バンしたことがあったが、その後うなぎ登りに人気がでて、今じゃ有名人だ。(何故か)ロッキングオン誌で、人生相談のコーナーも担当していた事があるバイタリティの溢れる男。出番前にふらっと現れて、2、3曲弾き語りをして消えた。

特別ゲストの後は、アルゼンチン出身のドラマー、クリスチャンを迎えたオメガ初ライブ。彼は、ぼくより少し年上のポストパンク世代で、全米ツアーとかまわっていた筋金入りのミュージシャン。電子ビートと絡み合ってワイルドなグルーブをつくる。40代のおっさんリズム隊が、20代のギャルをサポートしている訳だが、別に自然な感じだと思ってる。つまり、音楽性が国籍、性別、年齢差を超越しちゃってるからフツーなのだ(とあえて言おう)。オーディエンスの反応も、手応えを感じた。

ボルチモアツアーは、クリスチャンの都合がつかなかったので、3人で行った。行きは順番に交代しながら運転していった。ライブは、コメディーショウのトリであった。インターネットでオンエアされるもので、数台のカメラもまわっていた。飲み物持ち込みOKなので、みんなビールをガンガン飲んでた。アメリカンジョークがあんまピンと来ない僕も、テキトーに笑っていた。テレビのスタジオみたいなところであったので、音響もスゴく良くてやりやすかった。翌日、仕事があった我々は、なんとかニューヨークへ戻ろうと試みるが、夜中3時に断念。フィラデルフィアにあるエイバの母の家で、仮眠をとらせてもらって、朝早くに出発した。

その3日後は、モンキータウンというちょっと変わったハコでのライブ。なにが変わっているかというと、そのスペースは正方形で、4面の壁はスクリーンになっていて、映像が投影されている。オーディエンスはその4辺にそったソファーに腰を下ろす。その前にはテーブルがあってナイフやフォークがある。つまり食事をしながらライブを観賞する形式。演奏者はその中心でパフォームする。前も後ろも無い空間なので、通常のステージでのポジションでは変になってしまうので、4人がそれぞれ向かい合って演奏した。お互いがとても見やすいという位置関係の変化の刺激は、いい意味で演奏に反映するのであった。

今週も、ライブがある。来週からはレコーディングもする。CDをリリースしたら、来年は、全米ツアーも計画してる。恐らく日本でもツアーする予定なので、その時は4649。

モクノアキオは、‘94年に渡米以来、アングラで、音楽活動を続けている。現在は、ニューヨークシティ大学で録音エンジニアリングも平行して行なっている。

www.myspace.com/spiraloop

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