
ロックはダサい定石のもとに成り立っている
ハイラインレコードについて、この全国ツアーのついて、詳しいことはよく知らない。野狐禅・GRiP・BAZRA・デキシードザエモンズ。このバンド名だけでいいような気がする。
まず野狐禅。1stアルバムが発売され、2/16にFITSALLでのワンマンが決定している。「一番最初にやって泥臭いフォークしかできませんけど、野狐禅っていいます。よろしくお願いします。のんびり聴いていってください。」言葉通り泥臭くのんびりと、しかしまったりではないスタートだった。2人で活動している彼らだが、本日はドラムを入れての3人構成。小細工無しに響く。単なる音圧でではなく「呼吸」で力を感じさせる演奏。重く、暗く、しかし何かを求める心を持った表現力。最近多い青春フォークパンクとは一線を画した「歌」。野太い声援が一番飛ぶステージだった。
次は本誌でもお馴染みのGRiP。左利きギターというバンドのフォルムが単純にいきなりかっこいい。「今日はHIGH LINE GO AROUND、ハイラインレコードが全国津々浦々回っていくイベントです。ハイラインレコーズの雰囲気を堪能して楽しんでいってください」と今夜を象徴するMCを挟みつつ、持ち味である疾走感を余すところなく堪能させてくれた。隙間なく攻めてくるスタイルは野狐禅とは対照的で面白い。バンド全員がこれでもかと押し出してくる音はホールが狭そうにすら感じた。
シドビシャスバージョンの「マイウェイ」をSEに登場したのはBAZRA。タイトながら遠心力のある演奏で引きつけられた。歌を聴かせたいかのように「声」が独立して訴る。「まだ閉じこもっているようだから俺らがこじ開けてやるよ」と、圧倒されている客席に向かって呼びかける。重厚なサウンドが文字通りドライブする感じはすごいと言っていいかもしない。
最後はデキシードザエモンズ。「そこら辺の一山いくらのバンドと一緒にされちゃ困りますよー」と言わずもがなの存在感で始まる。何度聴いても日本人とは思えない演奏。ベースがメンバーチェンジして初の名古屋、やっぱり日本人とは思えない演奏だった。ドラムはまるでキースムーン。「マイノリティーがマイノリティーのためにやっているロックでございますよ。今こそ扉を開放するときなんじゃないの?」とジュリーが叫ぶ。
グッときた。そうなのだ。ここにはどのバンドがどういうジャンルでなんてことは書かない。そういうカテゴライズは不要なのだ。だからそもそもハイラインレコードがどういう音楽を…なんていうのはちっぽけな説明なのだ。興味が出たら彼らを聴いてほしい、感じてほしい。このレポートの最初の言葉もジュリーが言っていたものをそのまま使わせてもらった。ダサくて滑稽で、そいつらしいそいつしかできない音楽。これがロックなんだと改めて感じさせてくれた夜だった。
良い夜だった。
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