人情紙風船

 みなさんこんにちは。やのあかね的世界もはや5回目。今回は音楽とは関わりのない、私の一風変わった友達のお話。突然ですが、動物に話しかけたことはないだろうか?実は私は結構よくやっている。しかもわりと無意識に、ごく当たり前のように話しかけてしまう。ある時人に指摘されて初めて「これはちょっとおかしいことなのか?」と気付いたのだ。それ以降は人目をはばかりつつ話かけることにしている。今はペットを飼っていないので、話しかける対称は家にやってくるノラネコである。彼は、日本各地でよく見られるモノクロのネコで、かれこれもう5年の付き合いになる。ネコは人間の言葉を理解するとよく聞くが、彼を見ていると本当にそうかも、と思う。呼びかければ「ニャー」と返すくらいなら、そうも思わないけれど、「今日は顔が汚れてるじゃん。」というと、すぐさま顔を洗い始めるのだ。単なる偶然か!と時々フェイントで綺麗な時にも言ってみたが、やはりすぐに顔から尻尾に至るまで熱心に毛づくろいを始めたのだった。本当に解っているのか、単にきれい好きなのか・・・。さらに、ある日借りてきたビデオカメラの試し撮りにと、何となくカメラを向けてみた時のことだ。彼はもう大人ネコなので、挑発しても何かにジャレついたりしないのだが、その時はいかにもネコらしくそこにあった石とたわむれ始めた。もしかしてカメラを意識している?!そこで私は妄想した。何かが中に入ってたりして・・・。ファスナーでもついてたらイヤだな、と背中あたりを探ってみたり、「メン・イン・ブラック」みたいに実は宇宙人なのかも、と疑いの目で見たり。バカバカしいけどちょっとだけ真剣だった。もちろんファスナーはなかったけど。そんな彼が近頃姿を見せない。何だか友達が一人居なくなってしまったみたいな気分だ。彼も結構老ネコなので、死んでしまったのかもしれないし、あるいは宇宙にでも帰ってしまったのかもしれない。「星の王子さま」という本で王子さまがキツネと出会うのだが、その時点では、キツネは十万ものキツネと何ら変わりはない。「俺を飼いならすと・・・あんたは俺にとってこの世でたった一人の人になるし、俺はあんたにとってかけがえのないものになるんだよ。」というキツネのセリフを思い出した。彼はしょせん近所のノラネコなのだが、この先も彼のことを忘れたりはしないだろう。

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