社説

毎年この季節になるとバンドの解散やメンバーチェンジが多くなる。なんとなくで誘われて始めたバンドも、最初の頃こそ友達大勢見にきてくれたけど、稚拙な楽曲と演奏力に言い訳ばかりのステージでは繋ぎ止める事もできずに減っていき、ステージから冷静に見下ろすガランとした客席では演奏のテンションも上がらない。そして一人部屋に帰れば仕事や学校にローン等伸ばし伸ばしにしてきた問題が忍耐強くちんまりと待っている。冷たい社会の現実にバンドどころじゃないって気がつく季節。しかしそれにしても今年は特に解散やメンバーチェンジが多い。一向に景気のよくなる見通しはたたず、就職率は最低を更新。短期間で楽して金になるようなバイトもなかなか無い。ライブハウスにでも出てればなんとかなるだろうと甘い考えでやってはみたものの、こんなにカッコイイはずの自分たちの音楽になぜか誰も見向きもしない。自分たちこそがオンリーワンだったのに。ライブの回数を踏む程にクリアしなければいけない問題が増えていく。周りを見渡せば他のバンドはなぜか巧くやってるように見える。何故だろうと自問しても簡単に答えは見つからない。そうそううまくいくはずもない。今どんなに売れているバンドだって最初はなんとなくで始まった偶然性のサバイバルゲーム。最初から自分の未来や結末がはっきりわかってバンドをやるやつはまずいない。一つのバンドのベクトルが始まり、時間が過ぎていくうちにいろんな人と出会い、いくつもの分岐点で迷って迷って前に進む。最終的にどうしても目的地にたどり着きたいのなら、続けないことには始まらない。その為にはいつも自分を燃やす燃料が必要だが、寒いこの季節はえてして燃料切れになるバンドが多い。あたたかいお客さんの声が何よりの燃料なのだが。