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 みなさん、いい恋してますか?エデンのまさともです。先月から始まったこのコーナー、おかげさまで非常に多くの反響を頂きました。中でも多かったのが、「意味が解りません」というご意見でした。

 うーむ、このままでは早くも連載打ち切りになりかねないので今月は軽めのやついきます。

 さいとうたかを、といえば「ゴルゴ13」だ。そう、最新の兵器を使う敵に粘土を武器に戦う男である。そんな世界をまたにかけて活躍する超A級スナイパーの彼に、仕事を依頼することのできるラーメン屋が名古屋の藤ケ丘にあるという情報を知人から得た。

 事の発端はこうだ。名古屋の藤ケ丘に、マズい、キタナい、高い、の三拍子そろったラーメン屋があるという。店主は営業時間中にもかかわらず店の椅子を並べて昼寝をしている。当然全く客がいないのだが、この平成不況真っ只中、なぜか店はつぶれることなく営業を続けている。

 そんな、ラーメン屋のお薦めは日替わりのAランチ、ボリューム満点のBランチだ。先日、知人が他の店が混雑していたので仕方なく店に入りAランチを注文、あまりのマズさにげんなりしていると、中年のサラリーマン風の男が店に入って来た。男は「Cランチ」と告げると、アタッシュケースを渡し何も食わずに店から去った。すると店主は慌てて知人を追い出し店を閉めたという。中東の革命家が暗殺されたニュースが世界を震撼させたのはその数日後だ

 「まったく、くだらない」読者の皆さんもそう思うであろう。UFOを信じる僕でもさすがにこれには懐疑的だ。そこで、僕は問題のラーメン屋を訪ねることにした。名古屋のベッドタウンである藤ケ丘。新しい店が多い、きれいな街だ。そんな平和な街の真ん中に問題のラーメン屋はある。

 「こんちわー」

 普通の客を装い、何食わぬ顔で店に入る。(普通の客なのだが)店内は思ったほど危険な雰囲気でもなく、どこにでもある「ラーメン屋」といった印象。ただどうしても、激しく変色したビール会社のヌードポスターと、恐らく田尾安志がいた頃のものと思われるドラゴンズのユニフォームが飾ってあり、それらが醸し出す中途半端なグルーヴが心に響く。一体だれなんだ?とポスターを眺めていると店主は甲高い声で突然言った。

 「なににする!」

 『ついに来た!』僕は心の中で叫んだ。店主は僕に何を注文しろというのか?Cランチか?一体いくらなんだ?あぁ誰を暗殺してもらおうか…いや待てよ、今日は2千円しか持ってないぞ、どーする?まさとも…。

 冷静に考えれば店主は注文を聞いただけだったのだろう。

 だがその時すでに僕の頭の中は完全に「ゴルゴ13」モードだったので、「穀物メジャーのS氏の暗殺を…」などと意味不明な注文をしそうになる。だが待てよ、いきなり本題に入ったのでは相手も警戒する可能性が非常に高いのではないか。そこで緊張のあまり震える体をぐっとこらえ、残された力を振り絞るように僕は言った。

 「あっあのCランチありますか?」

 「ないよ

 『諸行無常』とはこのことか。人がさんざん盛り上がってんのに店主はあっさり言い放った。そして、僕に残された道は一つだけだった。

 「じゃあ…Bランチでいいです…」

 Bランチはラーメンと、異常な大きさの唐揚げに、やたら固いご飯、黒く焦げた餃子だ。失意のどん底にある僕に追い討ちをかけるようなBランチ…くどい。

Illust テレビでマズい店を更正させる番組がある。みのもんたが非常識な店主を再教育するという番組だが、このラーメン屋も一度みのもんたに怒られた方が良いのではないか。ちなみにBランチ800円である。

 みなさんも、平和な街にある暗黒ラーメン屋に一度足を伸ばされてはどうか。
     (今月もオチなし)