次回遂に最終回?
LEMONADE KEIの初めての×××

第23回

 かの宮本武蔵が、かつてその名を轟かせた剣聖・塚原朴伝の庵に切り込んだ時、食事中であった朴伝はその太刀を鍋のフタで防いだという。

 人間追い込まれれば、何とかしてしまうモンである。実際、今僕は、〆切をとうに過ぎたこの原稿をなんとかしようとやっきになっている。というより、毎回そうなのだ(ホンマ、すいません)。

 しかし読者諸君、ここで少し考えてみてくれ。この原理をさらに推し進めて、敢えて自分をニッチもサッチもどうにもブルドッグな状況へ追い込んだとしたら…!不可能な事など何もなくなるのではないだろうか。自ら我が家へ火を放ち、火事場のクソ力をオシャレに演出するという三文バラエティー番組のようなこの企画、誰かやってみないか?

 …ウンウン、そうだろう。そんな事をわざわざやる馬鹿はおるまい。だがしかし、僕は敢えて現代のドンキホーテとなり、その風車へ向かおうと思うのだ。元来、追い込まれなければ何も出来ない性分である。時間をかけたところで、その出来に大した違いはあるまい。かえって、考え過ぎて迷いが生まれる結果となる。

 去年の暮れ、ラズベリーサーカスから誘いを受けた。

 「4月3日に、イベントやるんだけど、どう?」

 「…ああ、出るよ」

 遂に僕は我が家に火を放ってしまった。

 なぜなら、その時点でレモネードは活動を停止してしまっていたからだ。訳を話せば、それだけで一冊の本になってしまうので割愛するが、4月にライブなど出来る筈もない状態だったのだ。

 それなのに!ああ、それなのに!「ああ、出るよ」だって。そんな軽はずみな…。いや、軽はずみではない。僕の中の野獣の本能が瞬時の内に悟ったのだ。無期限に活動のメドがたっていないレモネードを前に、このままライブも何もやらずにいたら、僕は大須便りのエッセイストにすぎないではないか。ロックに洗礼を受けて十数年後の姿が小規模な東海林さだおでは、なんとも情けないではないか。何よりも、つのるこの思いを音楽以外でどう表現できようか!ドンッ(ここで机を叩く)。

 そんな訳で、僕は4月3日渋谷ラ・ママでライブをやる事になりました。バンド名未定、僕以外のメンバー未定。

 …さて、どうしたもんかな。弾き語りでもやるか。イヤ、それはなんか芸がないな。アイドルみたくカラオケでやるとか…一人芝居とか?…落語?そんな事したら、きっとみんなに殺されちゃうんだろうなぁ、ウフフ。

 …ハッ、イカンイカン。考え過ぎで頭がオカシクなってきたぞ。しかし、逆境に強い僕の事だ。きっと凄い事をやらかしてくれるに違いない。そう思いつつ、今日は寝よう。 

 …果たしてライブは出来るのだろうか?以下次号、いよいよ最終回へ!