好評エッセイ
LEMONADE KEIの初めての×××

第22回

  あっそうか!  なんか正月らしくないと思っていたら、今年はまだモチを食っていないのだ。可愛い君のヤキモチもいいけれど、日本の正月はやっぱりモチだよね。

 しかし毎年、年寄りがモチを喉に詰まらせて死んだりするけれど、あれは何だ?丸飲みでもしてんのか?ヘビじゃないんだからさ。みんなも街で年寄りを見掛けたら、

 「ツチノコと間違われるぞ」

 そう言ってやりましょう。

 …なんて、新春演芸大会のケーシー高峰ばりの年寄りイビリでもしない事には、正月気分が高まらない僕である。考えてみれば、年末から正月にかけて方々へ遊び歩いていた為、モチどころかメシすら落ち着いて食っていないのだ。イヤ、遊び歩いていたと云っても、女を騙して連れ込んだりとか、飲んだくれて天白川へ飛び込んだりとか、そういう楽しそうな事は一切していない。全てライブである。とは云え、自分が出演したのはラ・ママのロンドン・ブーツナイトに飛び入りしたぐらいで、後は専ら観客としてだ。色々なバンドのライブを観て我が身を振り返りつつ、明日への指針とする。そういう立派な行いをしていた訳だ。

 しかし、そのように様々なライブハウスを渡り歩いてみると、その全てに共通したある種独特な雰囲気、夢や希望や鬱憤や挫折なんかが吹き溜まりになっているその磁場を、とても愛している自分に気付く。10年以上も前、初めてライブハウスへ行った時、まさか自分がこんな風になるとは思わなかったけれど。

 今ではもう当たり前の場所となってしまったライブハウスだが、僕が高校生ぐらいの頃までは、まだちょっと恐い場所という認識があったように思う。少なくとも僕にとっては、戸塚ヨットスクールみたいなモンだった(言い過ぎ)。

そんな泣く子も黙る場所へ何故行こうと思ったのかと云えば、当時僕が気になっていたバンドが出演する事になっていたからだ。そのバンド名は「デビルス」という、これまた恐そうなバンド名(実際、恐かったらしい)だったのだが、当時見かけ倒しのハッタリ君だった僕は、勇気を振りしぼって観に出掛けた。

 そのライブハウスこそが、このELLであった。今でこそ愛着を感じる、見過ごしてしまいそうな入口、地獄まで続くのではないかと思われる狭い階段、レトロなトイレ、その全てが恐かった。しかしこの地下室に渦まいている「気」、デビルスのステージ云々とは別に、この空間を支配する何かに圧倒されたのを覚えている。

 その何かって何だろう。そう思って今までライブを演ってきたけど、正直まだ良く分かんないんだよね、これが。前回のELLから、かれこれ8ヶ月ぐらいたつけど、またソレを確かめに行くので、その時はみんなヨロシクね。

 あ、そう云えば忘れてた。

 明けましておめでとう。今年もよろしく。