社説

能無しがCDを作る現実


 98年、とんでもない数のバンドがデビューした。でもそのほとんどはシングルCDかせいぜいマキシシングル。なんでアルバムじゃないんだろ?予算があるんだか無いんだか。

 ライブはなぜかデビューレビューやFM局の招待ライブ、観客不在のごたまぜオムニバスイベントに最近はやりのインストアライブ。ほとんど全部が入場無料。そんなに値打ちがないのだろうか?おまけにライブちょこちょこっとやったらすぐまたレコーディング。年がら年中レコーディング。CD出しても宣伝もろくにせずライブもろくに演らずに次から次へと新譜のアラシ。せっかく曲を覚えてもライブでやるのは新曲ばかり。あっけにとられた客の顔。新譜が出ないとツアーが出来ない、予算が取れない。金を出してもらわなきゃライブも出来ない。放送局も雑誌社も新譜が無いと宣伝できない仕組みらしい。新譜の内容でなく出る事が大事らしい。

 それでもまだ新譜の出せるバンドはライブが出来る。業界も大リストラで、ディレクター自分自身もどうなるか分からない。クビになったら新人バンドのレコーディングどころじゃない。まかり間違ってタイアップでもつかないかぎりリリースなんて有り得ない。誰もが他力本願、売れそうな奴の後をついてまわって売れた時だけ自分の手柄。金の匂いのするバンドの打ち上げ会場は業界人の山。雲行き怪しくなると猫の子一匹いなくなる。こんな調子で次から次へと下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。とにかくなんかやらなきゃいけないんで手当たり次第に青田刈りしてCD出してみる(この時点では金はあるらしい)。でもやり方が分からないんで、とりあえず(ああなんてすばらしい言葉だろ)売れてる奴のモノマネしてみるぐらいしか能がない。

 バンド君も知らない誰かに売ってもらおうなんて甘いこと考えてると使い捨てられるよ。でも最近は数を撃ってもあんまり当たらない、特に大人が作った偽物はね。