好評エッセイ
LEMONADE KEIの初めての×××

第19回

 先日、街を歩いていて一瞬目を疑った。週末の夜を楽しむ人々で賑わう繁華街のド真ん中で、オバチャンが「放尿」しているのだ。呆気にとられる衆人環視の中、オバチャンは「どうでもいいよ、人生なんて」という表情で、小さな河を作っていた。

 僕が、驚きを通り越して半ば感心していると、すぐ後ろで誰かが騒いでいる。振り向くと、そこではしこたま酔っ払った学生風の若者が「俺の人生なんて、どうでもいいんだあっ!」と叫んでいた。

 なんだ、なんだ。流行ってんのか?ソレ。「人生なんてどうでもいい」

 そのなんというか無常観みたいなモノは、ある意味正しいのかもしれない。確かに、不景気だし、自殺がどうとかセックスレスだとか、何だか世の中は無気力ブームである。

 しかし、それではイカンと思うのだ。たとえ副作用が危険であろうとも、僕等はバイアグラとなって、せめて自分自身やその周りを勃起させなくては。

 ダアーッ!

 …などと今月のライブに向けて、アントニオ猪木化している僕であるが、あまりに久々なので、胸はドキドキ、チンコはピクピクである(下品)。と云っても、前回から、たかが5ヶ月しか経っていないのだが、ここ6〜7年、ライブの間隔をここまで空けた事がないので、何だか落ち着かないのだ。そしてふと、初めてのライブを思い出したりなんかするのである。

 僕は、バンドマンとしてはロックに目覚めたのが遅く、初めてライブを演ったのは18の頃だった。高校時代の友人と作ったそのバンドに、僕はブリブリのベーシストとして入ったハズが、いつの間にやら歌う事になっていた。

 カラオケなど、まだ無いも同然の頃である。

 「大声で歌うと、さぞ気持ち良かろう」そんな軽い気持ちだったと思う。僕は練習スタジオで、風呂場のオヤジの如く上機嫌に歌った。「ハア〜ビバノンノン」などと口をついてでる程、ノリノリ天国状態。ところが、テープに録って後で聴いてみると、諸君も経験あろう、「自分の声って何か変っ!」というアレである。そこで僕は無理に渋い声を作って、ライブに臨んだ。今思えば、自称トム・ウェイツ風のそのダミ声は、笑福亭鶴瓶のソレであったが。

 いわゆる自主コンサートであったその初ライブは、緊張の為か、あっという間に終わり、その前後の出来事に比べて、実は余り覚えていない。ただライブの間中、自分達が誰よりもカッコイイという根拠ゼロの自信で満々だった。そのようにツッパリ通した為に、ライブ後、僕は激しい胃痛に悩まされた。繊細だったのだ。これでも。

 10月25日、渋谷ラ・ママでレモネードは復活する。ライブ後、僕の胃は、きっとキリキリ痛むハズだ。

 ただし、今回の自信には根拠があるけどね(↑天狗)。