ニューヨーク特派員報告
第224回

デモクラッツの勝利


バイデンの大統領選当確が発表された11月7日(土曜)は、ただただ恍惚感に酔いしれることのできた1日であった。最近のルーティンである朝の森のジョギングを終え、買い物をしてワイン屋をでた瞬間に舞い込んできたそのニュースに歓喜した!そこはウェスト・チェスターというマンハッタンから北に位置する高級住宅地であったので、意外に周りの人々はクールで、クラックションを鳴らしたり、踊りまくったりっている感じではなかった。

急いで車で自宅近くのハーレムの方に向かった。12年前、オバマが当確になった時のマンハッタンの喜びと盛り上がりを経験したものとしては、また街のみんなとそれを共有したいと思った。バイデンは黒人に人気があるし、副大統領のカマラ・ハリスは黒人の血が入った女性。だから、ハーレムで盛り上がらないわけがない。車で向かう最中も、労働組合の仲間からのテキストがガンガン届き、N B C放送のアナウンサーの興奮気味の解説、そしてインスタに続々とあげられてくる喜びにわく人々の映像にとても気分が高揚した。

125ストリートにあるアダム・クレイトン・パウエルのモンヒュメントの前に沢山のいろんな人種が混じって踊っていた。ハーレムの街中、みんなが笑顔だった。喜びのクラックションがあちこちに響き渡っている。暖かい秋の日で、綺麗な青空の下、みんながウキウキしながらストリートにでている。クィーンの『We are the Champion』をかけて踊っているものもいた。4年続いた暗黒の時代の終わり。白人至上主義者のペテンは敗北したのだ!

4年前のまさかのトランプ当選の悲劇の日からずっとこの日を待ち望んで来た多くの仲間の想いが実を結んだ。長い戦いだったのだ。4年前、奴の当確の直後は毎日のようにトランプタワーの前でデモをしていた。それから、不条理なアクションを起こすごとに人々は街に出て、またワシントンDCへ足を運び幾度となくデモをした。今年に入って、新型コロナの情報を知っていたのにも関わらず、適当にしか対処せず初動が遅れたためにニューヨークでは2万人以上の死者がでた。そのほとんどが貧困層の有色人種である。トランプのコロナ軽視はこの選挙のキャンペーンでも明らかで、マスクもあまりしない自分の支持者を集めて行い、そこから感染して死んだ人も相当数いるという報道もある。

この夏にバイデンが正式な民主党代表の大統領候補に決定してから、実際に支持者を集めて集会をしないまでも、インターネットやテキストメッセージなどを巧みに利用して準備を進めていた。共和党支持者が多い地区には積極的にアプローチしたり、そういった活動に必要な経費の募金を呼びかけたり1日に3回くらいは状況をアップしてきた。

投票率66%以上という今回の選挙は、今までにない危機感の高まりによるものである。このパンデミックの混乱の中、ちゃんと正しい方向に舵を切ってくれるリーダーが必要なのは言うまでもない。危機に対処する事なく、己の選挙の事を優先し、混乱を意図的に起こすリーダーは一刻も早く除去されるべきなのだ。今のアメリカ(国外も)は想像以上に根拠のない陰謀論(トランプを有利にするための)が蔓延している。

バイデンの勝利が確実となった11月7日から3日たった10日現在でも、トランプはバイデン側に不正があると主張して負けを認めようとせず、法廷で争うつもりだ。郵便投票だから開票に時間がかかるし、その方法で参加する人はバイデン指示が多いことは最初からわかっている。アメリカの大手メディアや世界指導者達はそういった流れを知っているので既に流れはバイデンが1月に正式に大統領に就任する流れになっている。

この歓喜のクラックションは全米の至る所で鳴った。絶望と混乱の世界に少し光が見えてきた。ほんのひと時だとしても、大袈裟なくらい喜ぶことができて本当によかった。

もくのあきおは在米27年目の電子音響音楽家。コロンビア大学で音響関係の仕事もしている。

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