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ニューヨーク特派員報告
第172回

私の番号


最近、マイナンバーという制度が日本にできた。世間では、個人情報流出の不安やら、なにか陰謀論めいたことなどを理由に拒否したい人もいるなど、一部では物議を醸し出しているようにも見える。とある読者から米国にあるソーシャル・セキュリティー・ナンバー(社会保障番号)というよく似た制度と比べて僕の視点から、書いて欲しいというリクエストがあったので、今回はそれに応えてみよう。

しかし、マイナンバーという日本でしか通用しない和製英語の通称ネーミングはぎこちなさを感ずる。横文字をつかって親しみやすさを演出しようという意図が垣間見える一方、my numberという個人番号の英訳でもなく、マイ・チョップステックみたいな、独特のマイ概念。つまり「私だけの」という意味であろうが、そういった名前を採用した政府機関にうさんくささを禁じ得ないひとも少なからずいるのではなかろうか。

この所謂、国民総背番号制のようなものは、ヨーロッパ諸国をはじめ世界各国でも採用されているらしい。単に情報管理しやすいから、あるものであるとも思われるが、なんとなく共産主義のダーク・サイド、つまり、国家機関に監視されるのではないかという不安も無きにしも非ず。とはいえ、いまやあらゆるものがデータ化されてしまった社会で、個人情報はどこまで管理しきれるかはエドワード・スノーデンの話などをきくと疑わしさに拍車がかかる。

米国のソーシャル・セキュリティー番号もマイナンバーと同じく、主に年金や社会保障や税のためのものである。僕が、これを取得したのは、1994年。渡米してすぐのことだ。確か当時は、パスポート(ビザ付き)と電話かガスかの自分の名前になっている支払い書の2点があれば、外国人でも簡単に作ってもらえた。また、この番号は米国で仕事をゲットするためには、非常に役に立った。なぜなら、合法的にビジネスしている場所は、雇用の際にこれを提示しなければならないからだ。州と国の税金、そしてソーシャルを含めると稼ぎの約2〜3割くらいは稼ぎから天引きされることになるが、まあそれは、止むを得ないかといった感じではある。

だが、ソーシャル・セキュリティー番号の年金制度は、日本の年金に比べてお得である。なぜなら、10年払い続ければ受給資格がもてるのだ。25年払い続けなければならない日本の年金に比べれば半分以下の期間。また、自分が障害者になった時や、配偶者が死んでしまった場合などにも月々のお金が支給されることになっている。全ての額は、収入(支払った額)に比例していおり、毎年一回、送られてくる手紙にそれが記されている。また、大学などのIDやクレジットカードなどの本人確認の際にもこの番号が使われることがある。

マイナンバーの登場によって、心配されている個人情報の流出についてであるが、これはアメリカでは、ニュースで子供の番号を悪用されたなどの被害をたまに見かけたことはあったが、自分の周りでそういったことに関する被害を耳にしたことはあまりないので、銃乱射問題ほど深刻な問題では無い。

このように、アメリカのソーシャル・セキュリティー番号は、おそらく現在、日本政府がマイナンバーで目指しているものとあまり変わりはなさそうにも表向きはみえる。国民背番号みたいなイメージが、人間の尊厳にかかわるような感じはするが、実際は、それによって監視され、国家に思想を弾圧されるというようなことは、直接は、ないように感じる。ただ、情報管理機能の向上により、脱税はしにくくなる恐れがある。

もくのあきおは、94年に渡米。ブルックリン大学の修士課程にて作曲の勉強をしながらノイズバンドなどでも活動している。

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