「全ての壁を扉に」

 

第9回

「音が空間でどのように物理的に動くか、それが宇宙とどのように共通しているか」

前からずっと気になっていたbjorkの2011年リリース作品「biophilia」。ようやく手に入れる事ができました。率直な感想は、「やっぱりbjorkは僕らの期待を裏切らないけど、何十年も向こう側に行ってしまっているのだな」と、次元の違いを見せつけられには充分すぎるほど高次元な作品でした。『宇宙レベルの超実験的芸術作品!』と謳われた「biophilia」。そもそもこの「biophilia」というのは、bjorkが「音楽+自然+テクノロジー」をテーマに熱心に活動を続けているマルチ・メディア・プロジェクトの総称の事。その一環として、わかりやすく表現する為に「音楽アルバム」としてリリースされたのが今作。「音が空間でどのように物理的に動くか、それが宇宙とどのように共通しているか」を人類学的アプローチによって探求する。というのがアルバムのテーマで、曲別に視覚的に遊べるiPadのアプリケーションをリリースと同時に発表。しかしそれは単なる「娯楽」ではなく、教育目的に作られたもので、近々ワークショップも予定しているとのこと。そしてそれら全てをまとめたドキュメンタリー映画の制作まで予定されているという。
スケールがデカすぎて何がなんだかと、思うのはきっと僕だけじゃないはず(笑)もう一度オーディオの再生ボタンを押してみる。Tr-1「Moon」の印象的なイントロが始まる。とても心地よい気分になりながら、このアルバムに関する様々なレビューに目を通してみる。すると、とても興味深い事に、このTr-1「Moon」の変拍子は「月周期」を元にしているとの事。―「音が空間でどのように物理的に動くか、それが宇宙とどのように共通しているか」を人類学的アプローチによって探求する。
音楽教育まで視野に入れ始めたbjork先生は一体どこへいくというのだろう?いや、前述したように、もしかしたら既に向こう何十年先に彼女はいて、僕らに何かを教えようとしているのかもしれない。

NSDP敦史

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