FRICTION

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昨年2006年の春、この名古屋を皮切りにRECK(b,vo)が中村達也(ds/from LOSALIOS)を新たに迎え入れ、2人のみの編成で活動を再開した「FRICTION」。今回のツアーでは、初期FRICTIONにも達也にとっても縁の深いELLでのライブが実現するだけに、当時あの衝撃に出っくわしてしまったコアファンから、ここ数年で魅了された新世代まで、「待ってました!」と言う他無いでしょう!4/23のライブへの期待を胸に、RECK氏に直撃インタビュー。(取材・文 岩田舞海)

─“2人FRICTION”としてスタートしてからちょうど2年、今年は結成から30周年ですね?

RECK:「周りはみんなそう言うんだけどね。同じメンバーでやり続けてるとか、30周年という言葉を使うことに俺自身が面白みを感じたり、何かしらの理由があればもちろん使うだろうけど、俺としては全然ピンと来ないんだよ。普通はライブやって、レコーディングして、CD出して、ツアーやって…という流れがあるんだろうけど、俺の場合、それをスムーズにやってきたわけじゃないし、そもそも10年間はライブ活動自体やってないわけだから(笑)。だから、あまり言葉の意味をよく考えないでそういう表現をするつもりは俺にはまったくないんだよ。 」

─現在、達也と2人だけの編成でやっている理由は?

RECK:「新曲や新しいCDを作るということよりも、「ライブをやる」ということが俺にとって今は重要なポイント。その瞬間なんだよ、俺がいちばん面白いのは。今はそれがタッちゃんとだから、できるんだな。音一発の中にタッちゃんというものがちゃんといるから、音を出している瞬間に心配しなくていいし、楽しめる。これは気持ちの問題で、目には見えないけどね。ひょっとしたら、タッちゃんとは前世からの繋がりがあるのかも?ね、ハハハ(笑)。 」

─その今のFRICTIONの瞬間を、私たちもライブで体感することができるわけですね。

RECK:「うん、来りゃ、できるよ。ただ、『軋轢』を出した頃に生まれた世代があれを聴いて「凄い!」とか言ってくれてるのを聞くと、不思議な感じはするよ。俺にとっては既に大昔のもので、俺は今そこにいないわけだし。

みんな雑誌の記事や音楽評とか、与えられる情報を何の疑問も持たずに受け入れるのが当たり前になっている気がする。だけどね、本当に大切なのは音楽そのものなんだ。いちばんリアルで今そこにあるものが、情報のせいで見失われていると思う。だから俺とタッちゃんのやっていることに関しては、とにかくそこに来て、そこにいて、その場で音を共有することがいちばん大切だから、家でCD聴いて気持ちよくなってもらってるよりは、ライブに来てくれた方がいいんだけどね(笑)。

ライブっていうのはまさにその“瞬間”が大事で、目の前で俺たちが息をしているわけだから、それを自分で感じることがいちばん面白いことだと思うんだけどな。録音物とかアーカイブスの面白さももちろんあるんだよ、だけど、何か創りだそうとしている人間の、生身のリアルなものがライブにはある。それを感じようと思って自分から出かけていかないと、本当の意味で楽しむことはできないんじゃないかな。FRICTIONのCDを買ってくれるのもいいけど、それを大事に大事に聴いているよりは、外に出て身体を動かしなさいって俺は思うよ(笑)。 」

─聴く側も、自分から積極的に楽しもうとする姿勢は大切ですよね。

RECK:「楽しむっていうのは、自分で楽しみを創る、自分から見つけていくっていうことだよ。それはかなり積極的な行為で受動的なことではない。そもそも俺は自分で考えて自分から面白いことをしていかないとダメだと思っていたから、昔はチラシも全部自分で作ったりしたし、自分が面白いと思うことを自分で創っていくことこそがFRICTIONの存在意義でもあったんだ。それをやって来たのはね、FRICTIONだけだと思ってる。自分でちょっと誇らし気に言いますけど(笑)、超本気でそれをやってたのは、俺だけなんだよ、実は。で、俺はとことん楽しもうとするからあんたも自分でもっと楽しめよ、ってつい思っちゃうわけだ。昔、名古屋に演奏しに行った時、ミニコミを作ってるという若者が来て、インタビューしたいみたいなことを言われたんだけど、「そんなのやってるよりバンドやった方が絶対面白いから」って言ったのを憶えてるな。まぁ、今だったら余計なお世話的発言かもしれないけど、本当にそう思ってたんで、本気で言ってたな(笑)。FRICTIONを観るよりもっと面白いことを見っけて、自分でそっちをすべきだって思ってたの。当時から。 」

─ライブ盤『'79 LIVE』は京都・磔磔での演奏ですが、実はその前日が初めてのELLでのライブだったんですよね?

RECK:「たしか2回ほどやってるはず。実のところ、その磔磔でのライブよりもっといい演奏をしたという記憶が俺の中に残ってる。’79年の時じゃないと思うけど。

当時のELLって、ステージに行く時に物凄く細くて狭い通路があったじゃない?演奏が終わってステージからそこを通って出て行く時、ライブが物凄く気持ち良かったんで、“ヤッター!”と調子こいて飛び上がったら、天井が低くて梁に思いっきり頭をぶつけてさ。それですごく印象に残ってる(笑)」 」

─その時の音源って、残ってないんですか?

RECK:「自分たちで録っていなかったから、俺は持ってないね。誰かが録っていてくれて今聴けたら、かなり面白いんじゃないかなあ。

'79年の時のライブは、なんだか客がすごくうるさかったなあ(笑)。自分で録ったカセットテープがいろいろあるんだけど、その時のカセットには“PUNK-SIDE”って書いてたな、俺(笑)。 」

─現在の編成でのライブでは、RECKさんのエフェクター・マジックにだれもが度肝を抜かれたんですが、その後また変化しているんですか?

RECK:「試行錯誤は続いてるよ。俺の場合、ベースなんだけど同時にギターの音も出しているわけで、弾いている俺にとって限りなくギターの感触になるよう、スタジオで常に試し続けてる。昔一緒にやってた肥後くんが言うには、俺はどうやらいじくり好きらしいんだな。単純に、いじくり・実験好き(笑)。もうちょっとこうなんないかなとか、それでより良くなる気がすると、すぐに試したくなる。自分を使って面白がれる、楽しめるわけだ。昔からの曲も、ちょっと変えてやったりするのが楽しいんだよね。自分にとって新鮮だと、それが新曲って感じかな、ハハ。ギター音は偽だけど、俺とタッちゃんのやるROCKは偽装無し!だよ(笑)。 」

FRICTIONを一言で無理やり語るなら、「常に進化、更新し続けるバンド」。最少にして最大、最強の、強靭なロックンロール・バンドがまたやって来る!


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