ニューヨーク特派員報告
第66回

コラボレーション


大学に入ってから、グループで、作業する事が多い。人間は助け合って生きていくソーシャルアニマルなので、こういった経験は、必要だからなのだろう。昔から「3人よれば文殊の知恵」という諺もあるくらい共同作業は、効果的である場合が多い。同じ事を学んでも、捉え方や理解のしかたもそれぞれ異なったりするし、特に得意ジャンルがそれぞれ違う部分が、グループ作業をする時に功をなす。

時には、グループのメンバーのやる気の無い人とか、逆に物議を醸し出し、進行を妨げることや、または一人だけで作業を進めなければならないこともあるだろう。グループは共同責任だから、個人としての評価は無いので、そういった状況で、問題や不満が勃発する現場もたまに目にする。

ニューヨークの大学、特に僕の通う公立の大学は、移民の子供や留学生が多いので、グループのアイデアは多岐にわたる。国民性も反映させるので、日本独特の「でる杭は打たれる」とか「能ある鷹は爪を隠す」的な奥ゆかしさは、勘違いされるか、役に立たない。できるだけ気がついた事や、感じた事を口にしなければ、相手に伝わらない。

去年、社会学のクラスの時、ひとつのチャプターを5人のグループでディスカッションして、その要点をまとめて発言するということを毎週やって、順番に書記と発言役をローテイトさせた。英語を母国語としない外国人が多いグループの中で、書記を担当し、時に取り留めないアイデアの要点を掴み、紙に書き留め、さらにその散乱した要点達をまとめて発言したりする。これにはやはり、人により得意、不得意がある事を感じた。

西洋史のクラスのグループで、共産主義と資本主義についての利点をディベートするプロジェクトでは、米国人ばかりの中に入った事もあった。この組み合わせが、結構つらい。若い世代は、彼ら特有のコトバとかあり、会話のテンポも早く、アメリカ人独特のコミュニケーションのとりかたがある。まず、発言しなければ「理解していない」としか思われないし、解らないなら聞かなければ教えてくれない。あと、いいアイデアが浮かんでもちゃんとセンテンスにしなければ、伝わらない。

今回の音響芸術部でのグループプロジェクトは、オルタナティブ系ソングライターのダンカン・シークの曲をリミックスすることだった。メンツは韓国系米国人、僕を含め日本人2人とジャマイカ人。共通点は、レゲエと自然派趣向、そして、筆記試験のビリが集まった4人であった。

去年から、クラスを共にしていて、お互いのことは、それなりに理解しあっているだけに、作業はかなりスムースであった。順番にミキサーの前に座り、それぞれのひらめきを”打ち込み”最後にバランスを調節。リスペクトし合うことでそれぞれの持ち味を作品に反映できた気がする。

ほかのグループとの大きな違いは、オリジナルから利用したのはコード進行だけで、歌も取っ払って、ラップをかぶせた。雨の音を全体にわたって録音されたありのままを使用し、雷の音を曲の展開のアクセントに用いた。ライムは、都会人は雨を嫌うけど、本来、雨は天からの恵みとして歓迎されていたものという内容。

筆記試験の出来が駄目だった僕たちも、このリミックスはかなり良い評価をされた。独りじゃ無理なことも、みんなで力を合わせればうまくいく、奇跡だって起こすことができる。そんなことを確信した今回のプロジェクトであった。

モクノアキオは、94年から活動拠点をニューヨークに移し、現在はニューヨーク市立シティカレッジのソニックアーツで、作曲とエンジニアリングの勉強をしている。来年の1月7日にELLのステージに14年ぶりに登場する。ナマの僕を是非、見に来て下さい!
ポッドキャスト、Mad Chicken Radio 配信中
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インフォメーション
 

1月7日(日)@ell.FITSALL
MAD CHICKEN GROOVE 2007
ROOTS/THE FAKERS/鈴木圭介fromフラワーカンパニーズ

open17:30 start18:00
前売\2500 当日\3000(without drink)
Ticket Now Sale!!

 
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