ニューヨーク特派員報告
第50回

世界のコンフリクト


社会学の視点でコンフリクト理論とうものがある。今の、世間をそのまま肯定する見方(機能主義)に対し、現体制を疑問視し、改善を訴える視点だ。そこから考えれば、いかに地球上の富みが超不平等に分配されているかがあからさまになり、憤りを覚える。元祖アナーキスト(無政府主義者)、ジョゼフ・プルードンの有名な台詞に『Property is Theft』つまり、『財産は盗みだ』というものがあるが、もともと誰のものでも無かった土地に線を引き、そこにある資源の所有権をとなえている文明社会の構造には、金持ち(ブルジョワジー)はその強欲さから、資本主義を利用してさらなる富みの蓄積に励み、労働者を彼等の欲望を満たす道具として酷使するという、人道的に腐敗した世の中が浮き彫りになる。

人並みの衣食住のできない環境は、人格をも変えてしまいかねない。病院代が払えないばかりに、治るはずの病気を重くしたり、借金に手を出して、不条理な利息の為にさらなる悪循環を招いたり、まともな教育がうえられないばかりに、若くして将来の可能性を断たれてしまったりする。ニュースでよく見かける幼児虐待、詐欺や殺人などのバックグランドには、貧困(生活苦)が引き起こしたであろうと思われる悲劇に溢れている。しかし、それらの犯罪などは、アメリカや日本など地球上かなり裕福な国の中での話で、世界レベルで見れば、アフリカやアジアでの貧困などは、目も当てられないくらい凄まじく悲惨なものだ。多くの子供達は学校へも行けずゴミ処理場などで働かされたり、女の子はセックス奴隷として売られたりと先進国の常識からは考えられない現実がそこにはある。教育を受けることのできない子供達が成人して、文明社会や法治国家を築くことや、技術などの発展させることは容易な事では無い。結果として、そういった近隣諸国の進歩は先進国に頼ってしまう事が多く、その状況を悪用する強欲な資本家達も少なく無い。スタバの美味しい珈琲をつくっている農民達は、1週間働き詰めでやっと一杯分買えるくらいの賃金しか貰っておらず、ナイキの靴のほとんどは発展途上国の労働者を最悪の条件のなか酷使して会社の業績を伸ばし、コカ・コーラは、コロンビア共和国の労働組合員を暗殺してまで、作業員を低賃金で利用しようとしている。これは実に、18世紀にイギリスの産業革命が起こったばかりの時にすでに起こっていた資本家の強欲による利益第一主義のもたらした悲劇に共通する現象だ。

しかし、民主主義をかかげているアメリカや日本は僕の様な少数派の貧乏人には、なんの政治的な力は無い。資本主義社会の中では、失業率は雇用主のための労働者予備軍保持のために一定に保たれ、貧乏人は労働者確保のため意図的に貧乏であり続けさせられている。一方、金持ちは、産まれた時から社会的保証のゆきとどいた中、施設も整った優秀な教育機関を利用しエリートの道をなんの苦労も無く進んでゆき、一流企業や政治家など労働者や一般人を酷使する側の立場を代々、保持しつづけている。国会の大臣達の学歴をみれば、一目瞭然だ、ほとんど慶応義塾などの私立の中学出身のボンボンばかりだ。

社会主義者で有名なカール・マルクスは、宗教もまた金持ちが世の中で権力を持ち続けていることに一役かっているという趣の考え方をしている。マルクス曰く『宗教はアヘン』つまり、貧しくとも慎ましく働き者であれば、天国へいけるといった如何にも雇用主にとって都合のよい“幻想”を提起して、世の中になんの矛盾を感じる事無くボスのために働き続けるからだ。しかし、実際のキリストやブッタの生涯などを見ると解るように、彼等は決して世間のいいなりにはならず、むしろ歪んだ保守的な体制へ立ち向かっていった反逆者達であった。つまり、権力者達は、国を治める為に宗教を利用してきたという事実が歴史上、明白にあるのだ。

ブッシュ政権は、金持ち(地球上の富みのほとんどをコントロールしている)のための政治をしている。貧乏人からはどんどん税金をとり、白血病や癌患者を続出させる劣化ウラン弾を多用する戦場へ兵隊を送り、『イラクの自由』という大義名分の下、
石油をコントロールしようとしている。そして、ニューヨークの家賃はどんどん値上がりし、アーティスト達の生活は苦しくなる一方だ。リアリティは自らが意識的になることによって、表面上のものだけでは無い事に気付く。革命は簡単に起こせる事ではないけれど、できるだけ世の中の出来事に関心を持ち続ける事で正しい判断を下せる状態を保つ事を忘れたく無いと思う今日この頃だ。

モクノアキオの参加しているノイズバンド、エレクトロプタスは、8月5日に家賃の高騰により経営が危ぶまれている
伝説のライブハウスCBGBの救済コンサートに参加する。www.spiraloop.com

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