ニューヨーク特派員報告
第37回

ニューヨークパブリックライブラリー


僕は、静寂を求めると図書館へ行く。この完璧なまでに非社交的な空気はすべての逃げ場をシャットダウンし、僕を思考の大海原へといざなってくれる。家賃がとても高ーいニューヨークに住んでる利点のひとつとして、パブリックライブラリーの会員になれるということがある。ただの図書館、されど図書館。世界で一番の本とリソースの数を誇るこの公共の施設について今回は少々紹介することにしよう。

まず会員になるには、自分がニューヨークに住んでいることを証明するため、自分の名前の電気ガスの請求書、運転免許証、電話代の請求書などが必要だが、一度会員になってしまえばマンハッタン、ブルックリン、クイーンズに無数にある図書館から本が借りられて、しかもすべて(もちろんだが)タダだ。おまけに、ライブラリーで働いている人たちは、そこいらの本屋の店員さんとは大違いで、丁寧でいろいろと詳しくしかも親切なのだ。

図書館といえば、文学的な本や、実用書、古い新聞か子供の絵本など、退屈なものばかりという感じのイメージがつきまとうけど、今やそこには、CD、ビデオ、DVD、雑誌なども豊富に取り揃えてある。(今は日本の図書館にもあります?)

しかも、DVDやCDにしても新作とまではいかなくても、ちょっと前の映画とか、クラッシックやジャズはもちろんロック(マイブラディバレンタイン、ソニックユース等)ものとかも沢山ある。本に関しては、新しい本は殆どそろっている。

オペラなどで有名なリンカーンセンターにも、アートと音楽専門のパブリックライブラリーがあり、そこには沢山のアーティストの伝記やビデオ、CD、関連の記事などがある。楽譜や貴重な資料などは、その場だけで見ることができ、パフォーマンスビデオなど貸し出し不可能なものは、視聴覚室で見る事ができる。ここにあるCDの数はタワーレコード以上ある。

52丁目にある近代美術館の向かいにある図書館には、韓国語、インド語、ドイツ語、ロシア語などの色んな言語の本があるコーナーが3階にある。日本語の本は本箱に4つ程しかないけど、町田康や綿谷りさなどの新しい本もある。それぞれがその用途によって分類されていて、32丁目のブランチは、ビジネス関係専門のリソースがたくさんあり、26丁目のブランチには、音声の本が沢山ある。そして総合的な図書館がまた各々のコミュニティーに点在している。

そして(驚くべき?)便利なシステムがこの図書館機構にはある。それは、何処で借りた本やリソースも、マンハンタン内であれば何処の図書館にもドロップオフできるという事だ。わざわざ遠くの専門図書館まで、足を運ばなくても近所にある図書館へ返せばいいのだ。そのシステムのおかげで、ご近所の図書館の返却コーナーには毎回新鮮なネタを見つけだす事ができる。本の返却の延長も電話一本で簡単にできる。インターネットの検索システムも充実していて会員番号をいれてサーチすれば、沢山の文献、新聞などの記事のスキャン、PDF書類等が見つけだすことができるし、写真専門のサーチもある。

かつて、旅行生活をしてニューヨークへ辿り着き貧乏生活をしていた友人が、資本主義に頭を毒された僕に、ここは貧乏でも楽しめる街だと諭されたことがある。

本は所有する云々より、それを読むかどうかのほうが大切だ。借り物人生で何が悪い。要はそれを吸収(エンジョイ)したか如何である。僕は、暇を見つけたら図書館へいく。そこには未曾有のお宝との出会いがいつも手を拱いているから。


モクノアキオは、10年前にニューヨークに移民してからダウンタウンを中心に音楽活動をしている大学生。oblattのCDに参加し、ポルトガルからリリースされる。http://www.spiraloop.com

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