ニューヨーク特派員報告
第35回

美術手帖


肛門は、動物が見られると一番恥ずかしい部分だと、たしか小学校の先生に教わった事があるけど、SOHOにある現代美術のニューミュージアムに今、その写真は、芸術作品として誇らし気に展示されている。今回は、最近、ゲイやレズビアンの結婚フィーバーで、盛り上がっているアメリカ合衆国の側面を、リアルに描き出しているキッチュな映画監督、ジョンウォーターズの個展を案内しよう。まずは作品のクリティックの前に、彼の簡潔な略歴。ニューヨークとワシントンDCの間にあるビミョーな町ボルチモアの出身で、中流家庭で育ち、若い頃から写真をやっていた(『I loveペッカー』)。何よりも彼を有名にしたのは『ピンクフラミゴ』(1972)で、映画予告には、試写会に来た観客のブーイングや、引き攣った顔が描きだされ、噂から内容の壮絶さを連想させる至上最悪のお下劣映画または、アメリカB級映画史のはじまり。その後、中流家庭のママがカリスマ連続殺人犯の『シリアルママ』や、ハリウッド映画をコケにしまくる『セシルBディメンテッド』など、独特のテンポと知性をかくしきれないグロテスクなストーリーでヒットをとばしている。ブロードウェイのミュージカル『ヘアースプレイ』も大好評だ。

全体的に目についたのは、ウォーホールを彷佛させるスクリーンショット的写真の集合を対比させ、オチをつけたりしている。入り口から、ところどころの壁のピンクは、彼の作品はポップアートに属する事を主張しているかのように感じられた。奥にある3つの小部屋では、それぞれに彼の60年代のショートフィルムがループしていた。全体的には、ズームアップするフェティシズムと露出趣味を巧みに連続する平面にまとめあげていた。その中でも、心に残ったいくつかを紹介しよう。

整形手術の連続写真の隣には、彼の部屋の中をトビ出す絵本方式(平面に近い立体)で、観るものに、彼のインスピレーションの根源を示唆していた。本棚に詰め込まれた芸術や性倒錯や犯罪学の夥しい本や、そこに無造作に置かれたバービードール。犬のウンチを食べた今は亡きディバインや、爆乳女優のサイン入りの写真、真ん中の窓からは、のどかで、どこか荒んだボルチモアの住宅がみえる。例えば、音楽家のレーコード棚を観れば、その人がどんな音を出すか想像ができるように、その飛び出すリビングルームは、ジョンウォーターズが単なる変態ポルノ監督では無い事を完璧に証明してくれた。

その次に、観覧者に、『やはり!』という、まるでストーンズのジャンピンジャックのように、期待どおりに、見事な映画館のカーテンを装った拡大された匿名の肛門達の写真が展示されていた。『ピンフラ』の中の肛門ダンスを観てしまった時の衝撃がシナプスをつたって副交感神経にトランスデュースだしたその時、案内のお姉さんが来て、オーディエンスに『Do you like ass holes?』と説明を始め、真面目に作品を眺めている群集を客観視している自分に気が付いた時、『ああ、僕は、アメリカ人じゃ無いのだ。』と胸をなで下ろした。

『リズテイラーの髪と脚』では、ゲシタルト効果の応用を試みていて、沢山のブロンドの長髪だけの拡大写真と脚だけの拡大写真でキャンパスを囲み真ん中をすっぽり空白にする事で、観覧する者の想像力に刺激をあたえていた。対比を利用した作品では、元祖麻原彰晃のチャーリーマンソンの部分部分を、ドロシーモンローの襟や、ディバインの髪型、ブッラドピットの鬚と無理矢理共通させたオキシモロニックなこじつけが、はっとさせられた。

ウイリアムバロウズは『ゴミの教祖』という称号を彼にあたえた。『ピンフラ』はさておいても、彼の作品は間違い無くアメリカのサブカルチャーを代表するものだ。


モクノアキオの世界の先端を目指すゴミ音楽バンドElectroputasはメイデーにウィリアムズバーグで、No Neck Bluesらとライブをする。物理の試験勉強のため、3月20日の反戦集会に参加できなかったことを深く反省している。 http://www.spiraloop.com

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