ニューヨーク特派員報告
第33回

JBがDV


ファンキーソウルの組長、JBことジェームスブラウン先生(70)が家庭内暴力また逮捕されてしまった。マイケルジャクソンの幼児猥褻行為容疑やジョージクリントンのコケイン所持に続いてのできごと。アメリカ政府は黒人ファンク撲滅キャンペーンでもはじめたのか??とは言え、皆さん元気にシャバで暮らしていますが…

別に、JBを擁護するわけでもないが、1年まえにタイムズスクエアのBBキングシアターで観た彼のライブは壮絶であった。幸運なことに、ステージの真ん前で、真下からJBを見上げるかたちで楽しめた。そのクシャクシャなしわのひとつひとつにソウルが刻まれてた。

no new york のジェームスホワイトこと、ジェームスチャンスの壊れたパンクなファンクのライブの経験の方が先であった事もあって、JBがリズムをとりながらキーボードを弾く姿に一人納得していた。『ジェィーーーーーーームスッブラウン!!』で有名なあのMCの人も健在であった。

登場してくるまでに、約15分、ブラスバンドが彼の名曲をメドレーで演奏している間に、興奮はピークを超え、本当に登場してくるのか疑ったその瞬間、あのスーパーバッドが目の前に現れた!!背骨が曲がっていても、杖をついていてもおかしく無い70の老人なのに、まるでサイボーグの様にシャキッとし、膚もツヤツヤして昔の写真となんら変わりのなく、不自然なくらいのままであった。御自慢の真っ白い歯のスマイルで、マイクスタンドをブン回し、僕は自分の絶叫を押さえる事ができなかった。

が!!

2曲歌い終えたあと、何故かゲストのギャルシンガーが続けて3曲くらい歌いJBは横で踊っていた。そしてまた、1曲歌った後にキーボードを黙々と弾きだし、またゲストがでてきて歌いだした。最後はお決まりの『セックスマシーン』であの驚異のステップを御披露してくれた時には、僕は頭の血管が切れるくらいに雄叫びをあげ、その教祖の方へ歩み寄って行った。結局、1時間弱の短いステージで、JBが歌ってくれたのは5曲くらいで、10分くらい続いたアンコールにも応えてはくれなかったが、70ドルで、組長の唾のかかる距離で楽しめたのは、とても光栄だった!!

ファンクの教祖が暴れたあの日のサウスキャロライナは、凍結の為に電気が3日止まっていたらしく風呂にも入れず、苛ついていたのであろう。家庭内暴力を肯定するつもりは毛頭ないが、70才になっても、パワーが有り余って、また妻に暴力を奮ってしまったリアリティは去年BBキングシアターでみた彼がサイボーグでは無かった事を物語っている。

音楽性の革新さと、ソウルパワーと家庭内暴力に、なんら関連でもあるのであろうか?マービンゲイも一種の家庭内暴力によって命を経たれてしまったし、オリバーストーンの映画から察するにジムモリソンも相当奥さんを泣かしていたようだし、、。こじつけるとすれば、ある種のエモーションを追求するに至るその過程で引き起こす情緒不安定に起因するアクシデントとでも定義しよう。

いかなる場合も、暴力は負の連鎖に過ぎない。幼児虐待して殺してしまう人間も、ほとんどがかつては被害者(親から暴行された)だったケースが多い。ジョージアの貧しい家庭に生まれ育ったJBは恐らく、負の連鎖を子供時代に背負わされてしまったのであろう。しかし、彼の人生のファンクはその負に打ち勝つ為に、築きあげられたのだ。家父長制の精神および女性差別の名残りはアメリカ社会にはないが、虐げられてきた黒人たちの背負わされたカルマの名残りが、引き起こした悲劇なのであろう。

エラーするから人間なのだ。


モクノアキオはファンクの洗礼を受けたポストパンクの世代からアバンギャルドへ移行し、ニューヨークアンダーグランドでエレクトロプータスというバンドに参加しつつ、大学へ通っている。こないだデビットバーンにサインをもらってハッピー。http://www.spiraloop.com

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