このインタビューのちょうど当日の朝、偶然BAZRAのビデオクリップを観たんです。というか、正確にはTVから聞こえてくる曲がすごく気になって画面を観たら、それがBAZRAだったんです。音楽チャンネルって言っちゃえばBGMじゃないですか、流しっぱで他のことやっちゃうよ、みたいな。そんなヌルい感じを突き抜けて飛び込んできたのがファズ全開のギターのリフと「誉めてくれ!」という歌詞の連呼。 その曲『凡凡』を含むフルアルバム『凡 to be wild』をリリースしたばかりのBAZRAは3ピースとは思えない音の厚さ、その音と音の間にある張り詰めた空気感、一字一句いやでもハッキリ聞こえてくるユニークな日本語の歌詞、挙げたらキリがないくらい特徴だらけのバンド。最近ではその特異なまでの存在感がメディアで紹介されることも多く、TVやラジオで彼らの音に遭遇してる人も多いのでは。名古屋でのライブもここ数年コンスタントに行なってきた彼らですが、きちんと話をするのは実は今回が初めてということでバンドの基礎的なことから名古屋でのライブの印象まで、Vo.Gの井上鉄平さんに伺ってみました。 ―メンバー3人とも札幌出身と伺ったのですが・・・ 「実は違うんですよ。札幌出身は一人もいなくて、僕は横浜生まれなんですよ。Drのタクちゃんは釧路生まれ、Baのケンタロウは函館のすぐ近くの上磯町ってところで、3人とも港生まれなので『ミナトリオ』と言ってますハハハ・・・・・・すみません。 小さい頃、親父が転勤をいっぱいしてまして、この20代までの道のりは果てしなく険しい道のりで・・・神戸に行ったり、福岡行ったり。そして中学校3年生からはずっと札幌なんですが、メンバーは別々のところで生まれたにもかかわらず、札幌で3人が出会っちゃうわけですよ。これを運命と言わずして何と言おうか!という感じですよ。」 ―最近、北海道出身のバンドって熱いバンドが多いですよね。土地柄も関係するんでしょうか? 「どうなんでしょう、怒髪天、eastern youth、(ブラッドサースティ)ブッチャーズ、DMBQ、すこし世代が上なんでね。でも、なんかあるかもしれないですね、北海道って、閉鎖的なんですよ、どうしても冬になると断絶せざるをえなくなるじゃないですか(笑)。だから喜怒哀楽を必要以上に表に出さないと人に伝わらないんですよ、間に雪があるんでね。すごい人見知りだと思うし、そんな人たちに訴えかけないといけないので、熱量をものすごく上げていかないと伝わるものも伝わらないんじゃないですかね。」 ―それがいざ東京に下ってきたら、伝わりすぎちゃってしょうがないな、みたいな(笑)。BAZRAの音のことについてなんですが、趣向がすごくハッキリしてると思うのですが。もともと「こういうのをやるんだ!」というものがあったんですか? 「特になかったんですよ。前身バンドをDrのタクちゃんとやってた時は何だろ、ジョン・ゾーンとかニッティングファクトリー系ですかね、ノイズ系や、ファンクやソウルだったり。前身バンドは『バンドがやりたい!』って始めたバンドだから、歌詞とかも即興で、どんどんお客さんいなくなっちゃって(笑)、これじゃあイカンなって話になって、やっと『じゃあ曲作ろっか』って(笑)。 詩は小学生の時から書いていたんですが、それを歌詞としてやってみようって、1stミニアルバムの『ひょうろくだま』の1曲目『体温』って曲が出来たんだけど、出来てみたら、あら、これはいいね、やりたいことをやったらこれはシーンを見渡してみても鳴ってない音だねって。で、2000年にケンタロウを迎え入れて今に至ると。」 ―作品(CD)に関してのディレクションもあまりないのでしょうか?特に、1/21にセカンドアルバムの「凡 to be wild」がリリースされたばかりですが。 「特にないですね、1曲1曲にはすごくあるんですが。なんかね、音楽について話し合うこともないし、こうしよう、ああしようというのも全くないんですよ。唯一あるのは曲を作ってる最中のドラムとベースで、タクちゃんはベースラインが浮かんで、それにあわせて叩く人なんですよ。で、そのケンタロウはスパーってタバコ吸って『どっから入ればいいすか?』みたいな。で、そのラインを伝えて・・・ケンタロウも天才的なベースで、最初は『わかんないなー』みたいな感じなんですけど、スイッチがはいるとスパーン!とくるんですよね。アルバムの中での曲のバランスもなんとなく想像するじゃないですか。でもお互いに絶対に口に出したりはしないし。でも出来上がったものに関してはなんとなくでは済まされない、ちゃんと現状を封入してるものになってますね。」 ―BAZRAのライブも「もしかしたら3人仲悪いかも」(笑)ってぐらいものすごい緊張感がありますよね。 「あれはね、仲悪かったら逆にできないですよ。僕らはお互いにいて当たり前な存在で、ぜんぜん躊躇しないし。俺はこうしたいんだーっていう主張をするというのも音楽的で気持ち良いと思いますね。」 ―そんなライブに対しての名古屋のお客さんの反応というのは?大人しいなあ、って思いませんか? 「来る前は名古屋は難しいんだよって聞かされてて、でも僕らも照れ屋だしな(笑)、人見知り同士結構上手くいくんじゃないの?って言ってて。実際は、純粋に音楽を聴いてくれて、『こういうふうに聴いてるよ』『こういうふうに思っているよ』ってステージに伝わってくる聴き方をしてくれてると思います。意識してないところで体がリズムとってたり、気持ちが動いてるっていうのはこっちからも見てれば分かるから、すごい嬉しいですよね。いや、もう名古屋大好き。」 ―では、最後に名古屋の、このペーパーを読んでくださってる皆さんにメッセージをお願いします。それにしてもああ良かった、井上さん、写真のイメージでもっと恐い人だと思ってたので・・・。 「そうですか?最初に恐いって思わせておいた方が、後々いい人ですねって言われることが多いじゃないですか。いい人そうなのに突然怒ったら、なんか感じ悪いし(笑)。もうね、僕は心の底から名古屋が好きで、名古屋に来るっていうだけで僕はもう胸がハッピーですが、名古屋の人もですねBAZRAが来るっていうだけで胸がハッピーになれば、これ幸いと思います。」 3月29日のライブはレーベルメイトの椿屋四重奏をはじめ、つばき、LUNKHEADと注目のバンドと共演。ニューアルバムを聴いた限り、3月のライブは今まで以上の熱量とテンションになるのは必至、こんなに「名古屋好き!」って言ってもらった以上、名古屋のファンもそれに体で応えんといかんでしょ、やっぱり。 |
BAZRAのライブスケジュール。地元からはつづれが参戦! |
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