ニューヨーク特派員報告
第26回

明日はレコ発!


バンドって不思議だ。これ程、グループでの創作、表現が如実に伝わってくる(伝える)ことができる媒体は無いと思う。コンピュータが普及し、個人でも簡単にトラックを積み重ねる事ができる様になった昨今、新たに、共同作業の尊さを見つめ直すべきでは無かろうか。卓上で築きあげられた架空のエゴイスティックな和音よりも、各自のエモーションをダイレクトに衝突させたバンドサウンドのほうが、時間軸の流れとともにより奇跡に近付ける。

僕が、初めてバンドを結成したのは、16歳、高校生の時だ。初期パンクやネオアコースティク的なモノを目指している、いわゆる洋楽指向であった。稲沢市民会館や、大門のスタジオV(今でもあるのかな?)のELL主催のバンドオークションとかに出演した。結局そのバンドは高校生だったので、ドラマーが将来的な事を考え脱退し、活動停止。そのあと、6つ年上のギタリストとつるんで、Rootsというバンドを結成させた。綴りがどことなくDoorsに似ているという事で、名付けられたバンド名だけど、同じ名前のバンドは僕が知ってる限りでも3つある。

ニューヨークに移住する前に1年間くらい、東京の下北沢で独りで弾き語りをしつつ僕は、日本で音楽活動を続けるか海外でキャリアを積むべきか非常に悩んだ。高等学校もろくに通わず、バンド活動しかしていなかった僕に英語ができる訳も無く、苦労するのは目に見えていたからだ。しかし、当時、上京し、完全にステータスがゼロに近い状態になっていた自分は、日本を脱出する以外、身の置き場が無かったのも事実だ。(ある意味、海外で外国人として存在することで、大義名分を果たしたつもりでノホホンとしていた事実も否めなくもないけど、、。実際、日本へたまに帰ると、その押し寄せてくる現実感は、まるで浦島太郎のそれに近い。)

94年に渡米して、半年後に当時、人気急上昇中だったボアダムスのギタリストの山本氏を通し、現在のバンド、エレクトロプータスのメンバーとめぐりあった。僕は、ベーシスト兼ボーカルとして、このバンドに参加した。ベルギー育ちのハンガリアンであるギタリストのジョーはもともと、インディレーベルを主催していて、何枚かレコードもリリースしていた。ドラマーのジャイコは元ストリッパーで、現ゴーゴーダンサーで、インディ映画に出演したりと花のある日本人ギャルで、『Buzz』というロッキンオンの今休刊中の雑誌にも文を書いているライターでもある。もう、活動し始めてから8年くらいたっている。非テクニック指向で、エモーション追求型のバンドだ。マニアックな音とカルトな映画に詳しい集団でもある。

幼い頃、母は、僕に『継続は力なり』とよく言った。退屈でなんにも変わらなくても、続けていくだけのことの難しさを知ったのは、最近の事かもしれない。ライブはその時の状態なので、ビデオで見るのとは、違う。例えば、レッドツェッペリンやドアーズの再結成が不可能なように、生では無いメディアという伝説には続編が創れないけど、僕らバンドマンは、その一見、金太郎飴の断面のごとく変哲のないようにみえるリフレインを躍動するバイブにする努力を惜しまない。

バンドって、素晴らしい。各々の個性を持ち寄って、リスペクトしあって、奏でるハーモニーは唯一無二の尊い産物だ。明日は(6/30/03)、エレクトロプータスのレコ発ライブだ。僕が人生で一番長く続けているバンドです!!


杢野章夫は名古屋西高等学校中退、現マンハッタン大学生のロックンローラーです。自らのサイトwww.spiraloop.comもチェケラウト!!Electroputasの新譜はブルックリンのレーベルsocial
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