The Arcades

「ロクなバンドがいませんね。熱がない。こないだ初めてクラブで演ったんだけども、確かにみんなノるんだよな、ライブハウスより。みんな始めからオカシくなってるから。60'SのDJがいて、キンクスとかバンバンにかかっている中ステージ出ていって、簡単だったね、ワッとなるのは。でも他のバンド観たらさ、なんかもうダメだもんね。そういうお祭り騒ぎに慣れちゃって、技術も経験も浅いし、何より熱がない。せっかくいいギター買ってるのにヘボい、みたいな。真面目に音楽聴きにきた人はちょっと困っちゃう。だからね、ライブハウスで客が引いちゃって全然ノらなくても、俺はそこでちゃんと自分の音楽をたたきつける奴の方が偉い気がする。」


 いきなり過激な言葉で我々を挑発する山本伸之助、通称DC(団長)。今年1月にエレクトリックレディランドでのワンマンを成功させ、その後もコンスタントにライブ、リリースを行っているジ・アーケーズのGt.Voだ。彼が最も気にするのは、至って簡単、「ロックであり続けること」。そのあまりの潔さで、観る者を置き去りにすることもしばしばだ。

「バンド側の責任だね。表現する側の手法は客にちゃんと伝えて、その上で、もう無理やり聴かす(笑)。客がつまらんからといって、こっちが腐っててもしょうがないし、狭いクラブで大騒ぎするのとかELLとか、そのデカいとか何とかっていう、場所に気負けするようなことがないくらい集中することだよね。アーケーズには、ウルサがたの客もいるもんで、例えば『今日は団長のギターのキレが悪かった』、とか『カヴァーがなかった』とか、『キンクスやってくれ』とか、そういう人も納得させるようなライブをやっていかないとだめだろうね。」

 そう、ジ・アーケーズは、キンクス、スモールフェイセズ、ローリングストーンズといった60'S、70'Sのロックをこよなく愛するロックバンド。そのものズバリのストレートな日本語のシャウト、ドライブし続けるドラム&ベース、そのシンプルなサウンドに色っぽく絡むキーボードとサックス。キーマンでもあるGt.Voの山本はこれらの「カッコよさ」を体現しようとする人間だ。

 「おれは名古屋の団長だもんで、闊歩したいんだけどノりきれない若者から中年まで連れて行かないといけない。だからノリの悪い奴らはまるで病気の治療のような感覚でライブに来てると思うよ(笑)。そんな人らが『ああ、今日は団長がハジけてたな、明日メールしよ』とか帰りの電車の中で、ライブを思い出してニヤっとしてるって俺は勝手に信じているので、あんまり気にしてない。気にしてないけどバンドに責任はあるな。ちゃんと与えるべきものを与えられてるのかどうか。MCとか曲とかがどうこうっていう簡単なものじゃなくて、根深いな、治療だから。
 バンドもさ、1回でもライブをやればその責任に気づくはず。それに気づかない奴はライブハウスで金とってライブなんか演っちゃいかん。バンド同士にしても昔は死闘暗闘の世界だったけど、今はこう、ヒリヒリするようなバンドがいない。

 失望しているのか、何かに望みをつないでいるのか、いつも叩きつけるようなライブをみせる彼ら。この秋は、サウンド的にも好敵手と言えるザ・プライベーツと9月21日に、そして10月28日に岡本真来という全く方向の異なるバンドとライブを行う。この対バン相手を知っている人ならば有り得ないと首を横に振るような組み合わせ。山本はこの2つの異なるライブを自分たちへの「宿題」と言う。

 「この宿題の意味はさ『ロックミュージシャンたるもの、ガッチリきめよう』という、最近俺がこっそり思っていることなんだよね。普通、正しいミュージシャンが街をあるいていると、どんな格好をしていても、俺の目には「あ、あいつロックだ」って写る。そういう普通のミュージシャンが特別な人間であるということをもう一度示せ、っていうことだと思ってる。昔のテレビ番組を観れば、ロックバンドとアイドルが交互に出てきたりして、でも俺が観たかったのは世良公則だったりCharだったり原田真二だったり。そんなふうで考えれば、他のバンドのギャルがキャーキャー言ってる中で俺が『お前のケツにファイヤー』と歌おうが、きっと普遍性があるはずで、なんだか面白いんじゃないかなと。
 プライベーツなんか、何とかバズ(プライベーツの"BUZZ A WHILE..."というCD)を聴いたらカッコいいじゃん、で、"PSYCHO GENERATOR"を聴いたらこれも良い!"I WANNA BE YOUR MAN"なんか聴いちゃったら、『なにあんたファンになっちゃうじゃないの』って思ったけど(笑)、同じ様なものを聴いて同じだけ音楽やってきて、こっちにも考えはあるし、プライベーツのファンにも良いなって思ってくれたらね。ちゃんとなんかキチンとキメてがんばっていかんといかんなと。まあよくも悪くも俺の責任だけどね。」

「俺の責任だけどね」これも山本がよく言う言葉だ。全ては自分の中にあって自分の中にない、最終的に向かい合うのは自分自身、ということか。思わず音楽の域を超えた話になってしまいそうだが、そう御託を並べるのも彼ららしくない。まずは彼らの音を聴いて、彼らのカッコよさがハッタリなのかどうかを確かめてほしい。

「ミュージシャンたるものさ、自分がで全てをやってたら果たして上手くやれるだろうか、って考えてほしいよね。みんな中心人物ばっか生き残って…。おれは切らないね、メンバーを。ビートルズもストーンズもまあ、初期のメンバーは流動的だけど、固まったメンツだよね。そうでないと自伝が書けん!って思ってるから(笑)。不動のメンバー、そう不動のメンバーっていうのは正しいロックンロールの最低条件。メンバー4人ともの名前を呼ばれるような状態じゃないとロックンロールバンドじゃない。
 今の若手のバンドはともすればすぐ解散したりどうにかなっちゃうけど、自分達が何をやりたいか分かってないんじゃないかな。とにかくメジャーっていうんなら東京でも行けよ、良い音楽つくりたいっていうならつくってくれよ、カッコいいと思われたいならカッコつけろよ、本当にやりたいことがこっちから観てて分からない。アーケーズは今年俺が36で、タイミング的にはすっかりずれちゃってるかもしれない。でも、俺たちは目標は絞られてる。ロックを続けていたい。音楽に帰れってね。ずっと好きだった音楽をずっと続けてきて好きなものは好きだっていう骨をみせる、そういうのがかっこいいんだと思う。以上!」


インフォメーション
  info:次回The Arcadesのライブは…
9月21日(土) @ell.FITSALL
with THE PRIVATES
open18:30 start19:00 ad\3000 (without drink)
Ticket Now on Sale!!
10月28日(月) @ell.FITSALL
with 岡本真来、SPUNKY BULLET
open18:30 start19:00 ad\2000 day\2500
Ticket Now on Sale!!
 


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