photo photo
陰陽座 Live Report photo

photo最近、陰陽師がちょっとしたブームだが、その陰陽道の世界や妖怪・伝説など日本の怪しいモノをヘヴィメタルサウンドの中で表現するバンド、それが陰陽座だ。彼らは歌詞はもちろん視覚面においても、平安時代的な着物とメイクで「和」を演出している。そのヴィジュアル面に注目されがちだが、能や歌舞伎のように舞台を構築する上での衣装・化粧であり、見た目だけを飾るものではない。また客層も幅広く、今回予定動員数を大幅に超えたため会場をELECTRIC LADY LANDへと変更したことからも、彼らの人気は非常に高いことがわかるだろう。

それでは、11ヶ所に及ぶ初の全国ツアーの初日となったこの夜の模様をお届けしよう。

photo 20時01分、不気味なSEにGt,Drがかぶさると幕の中から陰陽座がその姿を現した。新作「煌神羅刹」の1曲目「羅刹」でスタートしたバンドは、破壊的な音圧で客席を揺らす。何という音の迫力だろう。思わず首を振ってしまう激しい演奏だ。その中を巫女風の衣装を着た女性Vo黒猫(くろねこ)が力強い歌声を聴かせると、客席はさらに盛り上がる。彼女の声は実にのびやかで美しい。狩姦(かるかん)の流麗なGtソロに続いて、Ba&Voの瞬火(またたび)がかけ声で煽ると多くのこぶしが上がった。

 疾走感のある「朧車」に続くのは招鬼(まねき)の怪しいギターリフから始まる「百の鬼が夜を行く」だ。男女ツインVoの声の対比が面白いこの曲では、赤を基調とした照明の中、まさに“百鬼夜行”といった光景。

 ここでMC。これまでの鬼気迫る演奏とは対照的に彼らのMCは非常に軽妙で和やかだ。黒猫が愛嬌のある喋りで、「狩姦さんは以前名古屋で働いていました」などの様々なエピソードを紹介。バンドリーダーの瞬火には客席から「兄上、社長」の声がかけられる。

 続いて「煌」、重いリズムでフロアを揺らす「牛鬼祀り」、「月に叢雲花に風」、「鬼斬忍法帖」がプレイされる。演奏は一貫して正確で安定している。この演奏を支えるDrの斗羅(とら)は時折歌詞を口ずさみ笑顔を見せ、破壊的なパワーのリズムを生み出していく。

photo そして今夜のハイライトの一つであると思うのが新作収録の組曲「黒塚」だ。能の演目にある鬼婆になってしまった人の話をテーマに作った、と黒猫が曲紹介すると、狩姦と招鬼がアコースティックギターを爪弾き始めた。静かな曲においても黒猫の歌唱力の高さは素晴らしい。彼女の澄んだ歌声に胸が切なさで締め付けられていく。招鬼が叙情的なGtソロを奏で、黒猫が語りを終えると、曲は全てを絶望に突き落とすように激しくなり、黒猫は悲壮感漂う歌と狂乱したかのようにのたうちまわる動きで、鬼になった悲しみを表していく。静と動、剛と柔がうまく表現された素晴らしい曲だ。

 本編最後は軽快なリズムの「おらびなはい」。かけ声にあわせてフロア−面に多くの扇子が振られる。アンコールで演奏されたのは「がいながてや」と「亥の子唄」だ。どちらも曲中に観客とのかけ合いをするパートがあり、各メンバーがこれを楽しむ。これもライブではお客様と喜びを共有したいという彼らの理念によるものだろう。

 実に満足のいくライブだった。迫力のある演奏、笑いを交えたMC、見る者を引き付けるステージング、全員参加のかけ合い、ライブの楽しさを最大限に味わうことのできるバンドだ。「メタルに妖怪?何じゃそりゃ?」と思って避けてはもったいない。ぜひ彼らの音楽に触れ、生公演に足を運んでみよう。きっと素敵な妖怪があなたに取り憑いてくれるはずだ。この夜の多くの観客のように。

photo
インフォメーション
  陰陽座の次回スケジュール、間もなく告知解禁!!
陰陽座HP http://www1.neweb.ne.jp/wa/onmyo-za/
 
 

copyright