OOSU PRESS
2001 Sep NO.111

ニューヨーク特派員報告
第5回

思いでのW14ストリート


W14ストリートは9、10アベニューのあいだにThe coolerという肉の卸売り市場の冷蔵庫を改造したライブハウスがありました。かつてはドラッグクイーンの売春スポットとしても知られたエリアでした。ぼくは5年前その隣のブロックに、5畳ほどの狭いスタジオ(ウナギの寝床)を借りて住んでました。

ある日、ぼくは友人を空港に送りに、フライトより3時間早く、キャブで向かいました。予想以上の渋滞で結局、友人は飛行機に乗り遅れてしまいました。家の近くまで来ると、消防車が沢山あり、僕のアパートに水をかけていました。

"またか!!"じつはこれは2回目でその前の年にもハーレムでサブレット(又貸し)してたとこに火が燃えうつたことがありました。すぐさま買ったばかりのマックとサンプラーのことを思い出し、消防隊を振り切って、アパートにかけこみ、滝のような階段を何とか登り、やっとの事で部屋に入ると青空がみえました。すっかり焼け落ちてしまっていました。CD、服は焼けこげ、ベットもギターもマックもサンプラーも水浸し、、。僕は、どうする事も出来ず、すぐに友人の泊まってるホテルへ行って、火事の事を告げました。取りあえず落ち着く為に中華をたべました。でもすぐに機材を運びだそうと現場にもどりました。赤十字の人が取りあえず、ホテルを用意してくれました。マックとサンプラーとギターだけ何とか運びだしました。この地点でもう沢山の物が何者かによって物色されて無くなっていました。

『電化製品は乾けば大丈夫!』という話しは本当でした。マックとサンプラーは生きていたのです!!!!その後、僕はしばらくの間、家賃ただの*1シェルターで、ホームレスの方々と暮らすことになったのでした。

The coolerの店長、ジェダイさん(彼もまたその3年後に火事でアパートをなくしている。)はかつては晩年のジャコパス(ウエザーリポート)とルームシェアしていた人です。ライブハウスのなかでは、一番オルタナ、アバンギャルド色が強く、いろいろ世話になった所でした。エレクトロプータスもレギュラーで出演していました。毎週月曜は、無料の日で、ドンフレミングやサーストンムーアや、ジェームスチャンスやらが見れたりする美味しい場所でもありましたが、先月をもって閉店してしまいました。(*3キャバレーライセンス等の問題が原因のようです)ここで見た一番の思いでのライブはもと*2CANのヴォーカリストの蛇毛バンドです。*4閉店ライブの時はのCANの初代ボーカル、とギタリストにも出会いても満足しました。しかしここの閉店は残念です。

モクノアキオ
元今池ロッカーズ。7年前にNYに移住し、以来エレクトロプータスでベース、ヴォーカル担当ほか、ソロではサンプラーなどを用いながらジャズしたりしています。最近はサンフランシスコはPAXrecoredingからの環境実験即興『Turn a deaf ear』に参加してます。近々Ruinsの吉田達也氏をゲストに迎えたアバンギャルドなドラムンベースなソロアルバム『アキテクトニカユーディオパラシュート』をリリースします。
www.spiraloop.comにて情報公開中!!
同封の写真は、閉店パーティの時のThe Coolerで撮影されたものです。ジェラードマランガ氏と彼の作品、ダリとイーディのスクリーンショットです。ずっとバーの壁に飾られていました。


copyright